大会長挨拶
第26回 日本核医学技術学会総会学術大会の開催にあたって
大会長 大屋 信義 
(九州大学病院 医療技術部 放射線部門 副技師長)

 医療の現場においては、インフォームドコンセントに始まり、クリティカルパス、EBM、ガイドラインなどの必要性が認識され、各施設においても真剣な取り組みが行われている最中である。 

 放射線診断や治療においても例外ではなく、多くのモダリティで、検査の有用性・有効性をEBMに基づいて証明する動きが始まっている。今では、画像診断・検査に関するガイドラインが学会を中心に策定され、会員の皆さんが目にすることも多いと思います。

 核医学診療では、他のモダリティに比して、定量的解析が古くから行われており、この解析値は、治療の評価、予後評価、治療方針の決定等に利用されてきた。会員の皆さんも日常の臨床においては、脳血流の定量解析、心筋血流や交感神経画像の解析、肝受容体の解析、腎レノグラム解析などですでにご存じの事と思います。しかし、定量値の信頼性は十分に満足できるものではありません。この原因としては、多くの点が指摘されており、皆さんも実感されていることと思います。今までは、一施設内での定量値で済まされていたかも知れませんが、これからは日本の核医学施設、ひいては世界の核医学施設全体のEBMを確立するために、定量値の信頼性を向上させる必要があります。一施設のデータではなく、世界規模での同じ核医学技術での論文を基にしたEBMを作り上げる必要があると思います。本学会でも、日本の核医学技術の現状を鑑み、『核医学画像の定量化・基準化WG』を立ち上げ、活動を行って来ましたし、その成果はHPおよび会誌上に報告もしました。しかし、あまりに大きな問題であり、WGでそのすべてを解決することは困難と思いますが、今年度までが期限ですので、本大会でその集約をさせて頂くことになります。

 最近の明るい話題としては、デリバリーFDGが保険収載されたことです。サイクロトロンを持たなくても、PET装置があれば、PET検査が可能になりました。核医学検査においてはFDG?PET検査は他の検査に比べて新しいということもあり、今なら日本全体でFDG?PET検査技術を標準化できる可能性が高いと考えのもと、理事会においてガイドライン作成班が立ち上げられました。1年間の活動でガイドライン案を作成し、本大会のシンポジウムにて会員の皆様に提案させて頂き、意見を頂くことになります。技術系学会として初めてのガイドラインになるかと思います。

本大会のテーマは、『EBNMTの夜明け』です。EBMに繋がるような多くの一般会員研究発表を応募して頂ければ幸いです。